今日から派遣社員

派遣社員を11年間しました。私の派遣社員での経験を小説にしていきたいと思います。これから派遣社員になろうと思っている人の参考になれば幸いです。私の経験に基づいた小説ですが登場する会社や人物は架空のものです。

(小説)今日から派遣第1話「派遣社員になったきっかけ」②

さてどうしたのものか。

バイトは辞めたはいいが仕事のあてがない。母親には急にバイトを辞めるなんて職場放棄だ、いい大人のすることじゃないと25歳の僕に言い放った。腹が立ったがその通りだ。それで母親にとにかくハロワークで失業手当の申請をしてこいと言われたので、僕は人生で初めてハローワークに向かった。

ハローワークは人でごった返していた。失業率数パーセントでもこんなに失業している人が多いのか。老若男女、スーツを着た人やらヒップホップファッションに身を包んだ人やら子供をおんぶしている母親やら様々な人がそこにはいた。しかし全員に共通したことが一つあった。それはみんな暗い顔をしていることだ。

やっぱり失業するのは不安がともなう。なんとかなるさと思ってはいても収入が途切れるのは精神的にかなり不健康になる。僕はまだ20代だからいいが、周りの中年の人を見ると少しぞっとした。若さにかまけて余裕をかましているわけにはいかない。早く次の仕事を見つけよう。

ハローワークの入口玄関に立つと求職者案内の看板にやじるしがしてあった。どうやらここが総合案内らしい。僕は案内窓口に立っている女性に初めてハローワークに来たことを告げると求職者シートなるものに鉛筆で必要事項を記入してくださいと言われた。市役所や郵便局にあるような記入コーナーで氏名、年齢、職歴、資格などを求職者シートに記入して窓口へ持っていくと求職者カードなるものを発行してもらった。おそらくこれで失業者を管理しているのだろう。後日雇用保険の説明会があると言われたが、それまでゆっくりしている暇は僕にはない。混雑しているパソコン求人検索コーナーですぐ仕事を探すことにした。

正直バイトはもうやめようと思った。大学の就活に失敗、そのまま卒業して地元の物流会社にバイトで入社したけど正社員登用の前例がない会社だった。いつまでもバイトではダメだと薄々、いやかなり思ってはいた。そもそもバイトじゃ女性にモテない。だからまず正社員だ。

資格はマイクロソフトのパソコン関係の資格と簿記3級、フォークリフト免許とかなり心もとない。事務系の仕事でもできないことはないだろうけど、事務募集に文系大卒男性が行っても入社後すぐ営業部に回されるのはなんとなく想像がついた。口下手な僕がバリバリの営業マンになれるなんてまったく思えなかった。だったらなぜ文系の大学に行ったんだと言われるかもしれないが、高校まで野球しかしてこなかった野球馬鹿には高校三年時に社会の仕組みはわからなかった。今となっては後の祭りだ。

僕は物流倉庫でフォークリフトの免許を取得し、実務経験も3年。重機の操縦になんとなく興味を持っていた。大卒のやる仕事じゃないと一般論ではそうなるが、地方の田舎じゃそんなことも言ってられない。

重機のオペレーターで色々検索してみると何件かヒットした。その中に年商100億、不要になった金属を輸出しているリサイクル企業に目が留まった。正社員、港湾重機オペレーター。港湾か。なんか危険そうな感じもするけど月給25万、完全週休二日制とある。家からもそんなに遠くない。とりあえず面接だけでも行ってみるか。よし申し込んでみよう。僕は番号券を発行して、ハローワークの職員に呼ばれるのを不安とワクワクが入り混じった心境で待った。