(小説)今日から派遣第1話「派遣社員になったきっかけ」④
僕は宮田リサイクルカンパニーの他に後日3社面接を受けた。
1つ目はグラフィックデザインの補助の仕事。僕は学生時代、野球の他に絵やデザインに興味があった。歴史の教科書の人物に落書きをして友達をよく笑わせたものだ。そんな奴はそこら中にいると言われればそれまでだが、まったく興味のない仕事をするよりはマシだと思って未経験可の募集に応募してみた。
結論から言うと撃沈した。デザイナーの男性と広告代理店の女性社長に面接をして頂いた。社長曰く、募集していた職種の担当の人が妊娠して休んでいるのだが復帰するかしないかあやふやらしい。だから僕をすぐ採用できるかわからないという。
僕は「だったらなぜ募集をかけた!?」と思った。僕はすぐ収入が必要だったし、採用になるかどうかわからない状態で日々過ごすのは地獄だ。結局後日連絡するとのことだったが連絡はこなかった。
2つ目は結婚式のビデオ撮影および編集の仕事。年配の社長に面接をして頂いた。
「この仕事は終わりがない。良い映像を作ろうと思えばいくらでも時間をかけられる。残業という概念はない仕事だよ。大丈夫?」
社長は僕にそう問いかけた。僕はクリエイティブな仕事はそういうもんだとなんとなく想像がついたので大丈夫だと答えた。
しかし社長は考え込んだ後
「せっかく大学を出たのにうちじゃもったいないんじゃない?」
と言った。結局不採用になった。
3つ目はカメラマンアシスタント。カメラマンのオーナーに面接していただいた。
オーナーは言った。
「実は女性が希望なんだよね。モデルさんにさわったりするから」
いや、だったらハローワークの職員が電話で問い合わせた時に断ってくれたらよかったのに。後でわかったがどうやら男女雇用機会均等法という法律で性別で断ったり、求人情報に性別優遇などは記載できないらしい。完全に無駄足だった。
僕はとりあえずクリエイティブな職業は横に置いておくことにした。そもそもいくら未経験可の募集でも自分の作品を作りためてないのに面接を受けてもアピールしようがない。僕の考えが大甘だった。別の仕事を探そう。
しかし僕はハローワークの検索パソコンの前で途方に暮れた。家から通える距離に自分のスキルを生かせる仕事がない。フォークリフト運転手は繁忙期だけの短期雇用ばかりなのだ。フォークリフトの腕には自信があった。リーチもカウンターも両方運転できる(リーチとは立って乗る小型のフォークリフト。カウンターは座って乗る中型、大型のフォークリフト)。だけど短期雇用なら常用雇用のバイトの方がマシだ。
僕は頭を抱えているとチラっと横のチラシコーナーが目に入った。コンビニの雑誌コーナーのようなラックに求人チラシがたくさん入っていた。どうやら県外求人コーナーらしい。そこに目を引く求人があった。
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正直僕の為の仕事だと思った。そしてのちに僕はこの会社に入社することになる。